この記事を書きながら、正直に言うと、何度も手が止まった。
「個人経営」と「組織経営」
どちらが正しい、という話にしたくなかったからだ。
取材をすればするほど、この業界がここまで続いてきた理由は、間違いなく、個人でサロンを守ってきたオーナーたちの努力にあると感じてきた。
だからこそ、その人たちが、いまどんな状況に置かれているのか。そこを、ちゃんと書かなければいけないと思った。

個人経営のサロンが持つ、どうしても消したくない良さ

個人経営のサロンには、取材のたびに「いいな」と思わされる瞬間がある。
オーナーとスタッフの距離が近くて、お客様一人ひとりのことをちゃんと覚えていて、サロンの空気に、その人らしさがにじんでいる。
「この人がやっているサロンだから通っている」そう言われる関係性は、簡単につくれるものではない。
美容業界の魅力は、こうした個人経営の積み重ねでできてきた。これは、取材を通して何度も感じてきたことだ。
それでも、多くのオーナーが同じところで立ち止まっている
一方で、取材をしていると、不思議なくらい似た言葉を何度も聞いた。
「人が辞めると、全部自分に返ってくる」
「休みたくても、代わりがいない」
「この先、いつまで続けられるんだろう」
どの人も、怠けているわけでも、逃げているわけでもない。むしろ、ちゃんとやってきた人ほど、すべてを一人で抱えているように見えた。
「個人経営が悪い」のではなく、個人に頼りすぎる形が、そろそろ限界に近づいているのかもしれない。取材を通して、そんな感覚を持つようになった。
「組織経営」という言葉に感じていた違和感
正直に言うと、最初は「組織経営」という言葉に、少し距離を感じていた。
大きくなること。管理されること。現場から離れていくこと。
そんなイメージが、先に浮かんでいたからだ。
でも実際に話を聞いてみると、 組織経営を選んだ人たちが考えていたのは、「拡大」よりも、どうやって続けるか、どうやって引き継ぐか、ということだった。
個人の人生と、事業の寿命を分けて考える。それは、逃げではなく、責任の取り方の一つなのかもしれないと感じた。
小さいことが「善」で、大きいことが「悪」なのか

美容業界には、「小さく続けるのが正しい」という空気が、どこかにある。
でも取材を重ねる中で思ったのは、小さいから守れるものもあれば、大きくならないと守れないものもある、ということだった。
教育。人の循環。引き継ぎ。
これらは、個人の頑張りだけでは難しい場面が、確実にある。
どちらが正しいかではなく、いま、何を守りたいのか。そこから考える必要があるのだと思う。
「一人で考えなくていい場所」が、ようやく見え始めた
取材の中で、何人ものオーナーが、こんなことを口にしていた。
「誰にも相談できなかった」
「どこに話せばいいかわからなかった」
この言葉が、ずっと頭に残っている。
最近、編集部が気になっているのが、事業承継やM&Aを、売る・買う以前の“相談の場”として設計している動きだ。
その一つが、M&Aプラットフォームの MANDA である。すぐに結論を出さなくてもいい。
考えながら、話してもいい。そういう余白が、ちゃんと残されているように感じた。
組織経営を選んだ、サロングラフの動き
サロングラフが MANDA に掲載していることも、編集部としては、とても象徴的に映った。
急いでまとめようとしているわけでもない。正解を押し付けているわけでもない。
個人で続けてきた人たちが、次を考えるときの“置き場”をつくろうとしている。そんな印象を受けている。
サロングラフ MANDA掲載ページ
編集部として、いま伝えたいこと
個人経営の良さは、これからも絶対に必要だ。同時に、一人で抱え続けなくていい形も、そろそろ選択肢として持っていい。
この記事は、どちらかを選べ、という話ではない。ただ、考えるための場所が、少しずつ増えてきている。
そのことを、共有したかった。


