ここまでの記事で、編集部では次のような点を整理してきた。
・美容業界は、個人の力に依存しやすい
・「戻る仕組み」や「共通の教育設計」が、ほとんど存在していない
・教育モデルを作らない限り、同じ課題が繰り返される
前回の記事では、その一つの選択肢として、通信制高校をベンチマークにした「カリキュラム連動型・動画教育」というモデルを紹介した。
では次の問いは、ここだ。
このモデルを、どうやって“一部の取り組み”で終わらせず、業界に残る形にしていくのか?

ヒントは、飲食業界で実際に起きている
参考になる事例として、編集部が注目しているのが、テンポスホールディングスが飲食業界で行ってきた取り組みだ。
テンポスは、
・個人経営の飲食店
・中小チェーン
・地域密着型の店舗
・専門業態の会社
といった、性質の異なる企業を、M&Aを軸にグループ化してきた。
そのやり方の特徴は、
・店舗ブランドは残す
・現場のオペレーションは大きく変えない
・経営や仕組みの部分だけを横断的に整える
という点にある。
現場を統一するのではなく、「続くための仕組み」だけを共有していく、という考え方だ。
この考え方を、美容業界に当てはめると

編集部が聞いている構想は、テンポスのモデルをそのまま真似る、という話ではない。
むしろ発想として近いのは、
・教育の仕組み
・人材の循環
・評価の考え方
・キャリアの積み上げ方
・データや履歴の扱い方
といった、これまでサロンごとに分断されていた部分を、少しずつ接続していく、という考え方だ。
M&Aは、そのための手段の一つであって、目的そのものではない。
なぜ、グループ構造が必要になるのか
ここでよく出てくる疑問がある。
「いい仕組みなら、各サロンが勝手に取り入れればいいのでは?」
ただ現実には、美容業界は、
・個人経営が多い
・経営判断が属人的
・教育に投資できる余力が限られている
・人手不足で、長期設計に手が回らない
という構造を抱えている。
そのため、どれだけ良い教育モデルがあっても、各社が単独で取り組むだけでは、業界の“標準”になるところまで育ちにくい。
ここで必要になるのが、複数の会社を、同じ方向に動かせる構造そのものという発想だ。
やろうとしているのは「買収」より「接続」

この話を聞いていて、編集部が一番しっくりきた表現は、M&Aによる「接続」という言葉だった。
・サロン同士を接続する
・教育モデルを接続する
・人材の履歴を接続する
・評価軸を接続する
・ヘアメイク師モデルを接続する
会社を大きくするというより、点で存在していたものを、少しずつ線にしていくイメージに近い。
進め方は、かなり地味
正直なところ、この取り組みはとても地味だ。
・一気に何かが変わるわけではない
・派手な成果がすぐ出るわけでもない
・外から見ると、何をしているのか分かりにくい
実際に行われているのは、
・小規模なM&A
・業務提携
・試験的な取り組み
・制度やルールの設計
・関係者とのすり合わせ
といった、細かい作業の積み重ねがほとんどだ。
今は「仕組みを回す前の準備段階」

現在のフェーズを一言で表すなら、事業を拡大しているというより、「仕組みが回るための前提条件を揃えている段階」に近い。
・教育モデルをどう設計するか
・評価軸をどう揃えるか
・人材が循環するルートをどう作るか
・どこと、どう接続するか
どれも時間がかかり、 途中で成果が見えにくい作業だ。
目指しているのは、こういう状態
この構想が進んだ先に想定されているのは、次のような業界の姿だ。
・どのサロンにも、教育の共通言語がある
・店舗が変わっても、キャリアが途切れない
・一度離れても、戻るルートが見える
・運営の考え方は共有し、現場の色は残す
つまり、人が変わるたびにリセットされる業界から、仕組みが少しずつ積み上がっていく業界へという変化だ。
これは、時間がかかる取り組み

この取り組みは、短期間で答えが出るものではない。
・数ヶ月で結果が出る話ではない
・1年でも足りない
・数年単位での設計になる
むしろ、すぐに成果が見えるなら、それは構造の話ではなく、単発の施策に近い。
編集部として、今見えていること
現時点で編集部が感じているのは、飲食業界で使われてきた考え方を、美容業界の文脈に合わせて、慎重に読み替えようとしている段階だということだ。
派手さはない。でも、これまで個別に存在していたものを、つなげようとする動きは、確実に始まっている。
今はまだ「結果」よりも「準備」のフェーズ。ただ、その準備がなければ、次の景色は見えてこない。


