美容室の採用活動では、「求人を出しても応募が集まらない」「採用しても長く働いてもらうのが難しい」といった悩みを抱えるケースがあります。
給与や休日などの待遇を見直すことも大切ですが、それだけでなく、「その美容室に入ったら、どんな仕事ができるのか」「どんなキャリアを描けるのか」まで伝えられているかを考えることも、採用活動の一つのポイントになります。
では、美容室としてどのようにキャリアの選択肢を作り、それを採用につなげていけばよいのでしょうか。
この記事では、サロングラフが取り組んできた「ヘアメイク師」という働き方を一つの事例として、美容室の採用とキャリア設計について考えていきます。
美容室の採用で「条件」以外に伝えたいこと

美容師の就職先を探すとき、給与や休日、福利厚生などの条件はもちろん重要です。
一方で、実際に入社した後のことを考えると、「どんな仕事をするのか」「どのように技術を身につけるのか」「将来的に何ができるようになるのか」といった情報も、就職先を選ぶうえで無視できません。
サロングラフが実施した新卒社員14名へのアンケートでも、サロン選びにおいて「どのような仕事ができるか」「どのような教育を受けられるか」といった、入社後の仕事内容や成長に関わる部分が重視されていました。
もちろん、14名を対象とした社内アンケートなので、すべての美容学生に当てはまるとは言えませんが、採用活動を考えるうえで、「自分のサロンに入ったら、どんな美容師になれるのか」を具体的に伝えることには意味があります。
「入社後に何ができるか」を具体的にする
求人情報では、給与や休日などの条件は比較しやすい一方で、「入社後の仕事」はサロンごとの差が伝わりにくいことがあります。
たとえば、
- カットやカラーなどの美容師としての技術を身につける
- 早い段階からお客様を担当する
- SNSを活用して自分の発信を行う
- ヘアメイクなど美容師以外の仕事にも挑戦する
など、入社後に経験できることを具体的に示せば、そのサロンならではの働き方が見えやすくなります。
サロン側からすると当たり前に感じることでも、求職者にとっては「そこで働く理由」になる場合があります。
「どんな教育を受けられるか」も採用情報になる
もう一つ重要なのが教育です。
「教育制度あり」と書くだけでは、実際に何を学べるのかまでは分かりません。
どのくらいの期間で、どんな技術を学び、どのタイミングからお客様を担当するのか。さらに、その後どのような経験を積めるのか。
こうした流れまで伝えられると、入社後のイメージを持ちやすくなります。
サロングラフでは、こうした「入社後のキャリア」を具体化する取り組みの一つとして、ヘアメイク師という働き方を展開しています。
サロングラフでは「美容師+ヘアメイク」というキャリアを作ってきた

サロングラフが取り組んでいるのが、美容師としてサロンで働きながら、ヘアメイクの仕事にも携わる「ヘアメイク師」という働き方です。
ヘアメイク師は、美容室での仕事だけにとどまらず、撮影やブライダルなど、さまざまな場所でヘアメイクの技術を活かすことを目指す働き方です。
サロングラフでは、この働き方を単に「ヘアメイクの仕事もできます」と求人で伝えるだけではなく、教育から実際の仕事につながる仕組みまで整えてきました。
採用で伝えられる「その先の仕事」を増やす
美容師を目指す人の中には、「美容師になりたい」という気持ちと同時に、「将来は撮影にも関わりたい」「ヘアメイクもやってみたい」といった希望を持つ人もいます。
そうした人にとって、サロンワークとヘアメイクを両立できる環境は、就職先を選ぶときの一つの選択肢になります。
これは「ヘアメイク師を導入すれば採用できる」という話ではありません。
重要なのは、自分たちのサロンで働くことで、どんな経験やキャリアにつながるのかを具体的に設計することです。
サロングラフの場合、その一つとしてヘアメイクという仕事を組み込んできました。
採用に関する数字にも変化があった
サロングラフの新卒採用では、2021年から2026年にかけて、採用に関する問い合わせ数と入社人数に変化がありました。
問い合わせ数は、
- 2021年:12件
- 2022年:13件
- 2023年:11件
- 2024年:27件
- 2025年:44件
- 2026年:69件
となっています。
入社人数は、
- 2021年:6人
- 2022年:6人
- 2023年:6人
- 2024年:7人
- 2025年:3人
- 2026年:14人
でした。
なお、2021年から2024年までは基本的な新卒採用枠を6人までとしており、2024年は状況に応じて1人追加で採用しています。
また、問い合わせ数が増えた理由をヘアメイク師の取り組みだけに結びつけることはできません。採用活動の内容や発信、求人市場など、さまざまな要因が考えられるためです。
さらに、「問い合わせ」と「応募」「採用」は同じものではありません。
そのため、この数字だけを見て「ヘアメイク師を始めたから採用が増えた」と判断することはできません。
ただ、採用活動の中で、美容師として働くことに加えて、その先のキャリアまで伝える取り組みを続けてきたという事実は、サロングラフの採用を考えるうえで一つの特徴と言えます。
ヘアメイク師というキャリアをどう作っているのか

では、実際に「美容師+ヘアメイク」というキャリアを作るには、何が必要なのでしょうか。
単純に外部のヘアメイク案件を紹介するだけでは、継続的なキャリアにはつながりません。
サロングラフでは、教育と実践を組み合わせながらヘアメイク師を育成しています。
616時間の育成カリキュラム
サロングラフには、ヘアメイク師を目指すための「サロングラフ ヘアメイクアカデミー」があります。
ヘアメイク師育成コースは616時間のカリキュラムで、美容師として必要な技術に加え、ヘアメイクに関する学びも行います。
カリキュラムは、ただ期間を短くすることを目的にしたものではありません。
必要な教育内容を整理し、教育時間を確保することで、学んだ技術を実践につなげやすくすることを重視しています。
また、3か月目以降はアカデミーサロンで実際のお客様を担当する機会も設けています。
「教わる」だけで終わらず、実際にお客様を担当し、振り返り、次の技術につなげる流れを作っていることが特徴です。
アシスタント時代から外部のヘアメイクを経験する
ヘアメイク師の特徴の一つは、アシスタントとしてサロンワークを学びながら、外部のヘアメイクにも関われることです。
一般的な美容師のキャリアでは、まずサロンワークを覚えてスタイリストを目指すことが中心になります。
一方で、ヘアメイク師の場合は、美容師としての技術を身につけながら、撮影など別の仕事にも触れることができます。
早い段階から実際の仕事を経験できることで、「将来ヘアメイクもしたい」という人にとっては、自分の目指す方向を具体的に考えるきっかけになります。
「学ぶ」だけではなく「仕事につなげる」
キャリアの選択肢を増やすうえでは、研修や講習を用意するだけでは十分ではありません。
実際にその技術を使う機会があり、仕事として経験できる仕組みが必要です。
サロングラフでは、ヘアメイクの教育と外部の仕事をつなげることで、「ヘアメイクを学ぶ」から「ヘアメイクの仕事を経験する」までを一つのキャリアとして考えています。
これは採用のためだけの仕組みではありません。
入社後にどんな経験ができるのかを明確にし、長期的なキャリアを考えられるようにすることにもつながります。
キャリアの幅を広げるだけで採用が解決するわけではない

ここまでヘアメイク師を一つの事例として紹介してきましたが、キャリアの選択肢を増やせば、それだけで美容室の採用が解決するわけではありません。
新しい仕事を取り入れる場合には、教育する人、仕事を担当する人、店舗を運営する人員など、現場側の仕組みも一緒に考える必要があります。
教育を誰が担うのか
新しいキャリアを作るときに、見落としやすいのが教育担当者の存在です。
カリキュラムを用意しても、それを教える人がいなければ継続できません。
特に美容師教育では、技術を教えるだけでなく、なぜその技術が必要なのか、実際のお客様を担当するときに何を意識するのかまで伝える必要があります。
そのため、新しい教育制度を作る場合には、教育担当者の確保や教育時間をどう設けるかも、あらかじめ考えておく必要があります。
外部の仕事とサロン営業をどう両立するか
ヘアメイク師のように外部案件を受ける場合、もう一つ考えておきたいのがサロン営業との両立です。
撮影などの仕事は、サロンの営業日と必ずしも都合よく重ならないとは限りません。
急な案件が入ったときに誰が対応するのか、スタッフが外部案件に出ることでサロン側の人員が不足しないかなど、店舗運営とのバランスを考える必要があります。
つまり、「ヘアメイクの仕事があります」と伝えるだけではなく、外部の仕事を受けてもサロンを運営できる体制を作ることも重要です。
採用後の人員計画まで考える
早期デビューや新しいキャリアを作る場合は、「採用できたら終わり」ではありません。
たとえば、アシスタントとしてサロンワークを経験したスタッフが、その後ジュニアスタイリストとして別の拠点でお客様を担当するようになれば、もともとのサロンにいるアシスタントの人数も変わります。
サロングラフでも、カリキュラムを修了したスタッフが次のステージへ進めるよう、Studio LaLaと併設する新しいサロンの展開を計画しています。
このように、スタッフが成長した後の働く場所まで考えることは、教育制度を継続するうえでも重要です。
採用人数だけではなく、入社後の成長、デビュー、その先の人員配置まで含めて考えることが、長期的な採用・教育設計につながります。
美容室の採用難に向き合うなら「入社後」を見直してみる

美容室の採用が難しいとき、「どうすれば応募を増やせるか」だけに目を向けてしまいがちです。
もちろん、求人媒体の選び方や求人情報の見直し、給与・休日などの条件改善も採用活動の重要な要素です。
一方で、自分たちの美容室で働くことで「何ができるようになるのか」「どんな仕事を経験できるのか」「どんなキャリアに進めるのか」を考えてみることもできます。
サロングラフがヘアメイク師という働き方を作ったのも、その一つの考え方です。
美容師としての仕事だけではなく、ヘアメイクという別の仕事にも挑戦できる環境を作り、教育から実際の仕事までつなげていく。
そして、そのキャリアを継続するために、教育体制や店舗運営、人員配置まで考える。
これはすべての美容室がそのまま取り入れられる方法ではありません。
ただ、採用について考えるときに、「どうやって人を集めるか」だけではなく、「入社した人にどんな未来を見せられるか」から逆算してみることは、一つのヒントになるのではないでしょうか。
サロングラフの採用・教育について話を聞いてみたい方へ
サロングラフでは、美容室の運営だけでなく、ヘアメイク師の育成や外部ヘアメイク、教育事業など、美容師の仕事を広げるための取り組みを行っています。
「自社でも新しいキャリアを作れないか」「美容師の採用について相談したい」「ヘアメイク師についてもう少し詳しく知りたい」など、具体的な導入を決めていない段階でも構いません。
採用や教育について考えている方は、まずは一度サロングラフの取り組みについて話を聞いてみてください。


