美容室の新卒採用では、「なかなか応募が集まらない」「サロンの魅力をどう伝えればいいか分からない」といった悩みを抱えるケースも少なくありません。
サロングラフも、以前から新卒採用が順調だったわけではありません。そこで採用活動の中で打ち出し始めたのが、「美容師として働きながら、ヘアメイクにも携われる」という働き方でした。
その後、2022年8月には「ヘアメイク師®」の商標を取得。現在は、美容師としてのサロンワークを基本としながら、ヘアメイクの仕事にも挑戦できる「ヘアメイク師®」という働き方を展開しています。
では、実際にこの働き方を打ち出してから、採用活動にはどのような変化があったのでしょうか。
今回は、サロングラフの新卒採用に関する実際の問い合わせ数と採用人数をもとに、その変化を紹介します。

サロングラフも、以前は新卒採用に伸び悩んでいた

現在では毎年多くの学生から問い合わせをいただくサロングラフですが、最初から現在のような採用状況だったわけではありません。
以前の新卒採用では、年度によって採用人数にばらつきがあり、1〜4人程度の採用にとどまる年や、採用まで間が空く年もありました。
美容室として採用活動を続ける中で課題となっていたのは、単純に求人を出すことだけではありません。
「美容学生に、自分たちのサロンで働くことをどうイメージしてもらうか」
「数ある美容室の中から、なぜサロングラフを選んでもらうのか」
そうした採用時の伝え方についても、考える必要がありました。
そこで2021年度から打ち出し始めたのが、「美容師だけではなく、ヘアメイクもできる」という働き方です。
2021年度から「ヘアメイクもできる美容師」を打ち出す

2021年度の新卒採用では、サロングラフが美容師として働くことだけでなく、その先にヘアメイクの仕事もあることを採用時から伝えるようになりました。
この年度の採用人数は6人。
当時は現在のように明確な採用選考の仕組みが整っていたわけではなく、先着順で採用枠を埋めていました。そのため、6人の採用枠が埋まった後にも問い合わせがあったといいます。
翌2022年度には、ヘアメイクについてさらに具体的に伝えられるようになり、採用人数は6人。
そして2022年8月、「ヘアメイク師®」の商標を取得しました。
ここから、単に「ヘアメイクもできます」と伝えるだけではなく、美容師として働きながらヘアメイクにも携われる一つの働き方として、「ヘアメイク師®」を形にしていくことになります。
「ヘアメイクもできる美容師」を打ち出してから、問い合わせはどう変わった?
では、実際の数字を見てみましょう。
サロングラフでは、2021年度から新卒採用に関する問い合わせ数を記録しています。
新卒採用への問い合わせ数
- 2021年度:12人
- 2022年度:13人
- 2023年度:11人
- 2024年度:27人
- 2025年度:44人
- 2026年度:69人
2021年度は12人だった問い合わせが、2024年度には27人、2025年度には44人、2026年度には69人となりました。
2021年度と2026年度を比較すると、問い合わせ数は約5.8倍です。
特に2024年度以降は、問い合わせ数が大きく増えていることが分かります。
一方で、問い合わせ数が毎年そのまま採用人数に比例しているわけではありません。
採用人数にも年度ごとの変化がある
同じ期間の採用人数は、次のように推移しています。
- 2021年度:6人
- 2022年度:6人
- 2023年度:6人
- 2024年度:7人
- 2025年度:3人
- 2026年度:14人
2021年度から2024年度までは、6〜7人の採用が続きました。
2024年度には当初の採用枠を超えて7人を採用した一方、2025年度は3人と一時的に減少しています。
そして2026年度は14人を採用。
問い合わせ数も69人と、これまでで最も多い年度となりました。
この数字だけを見て、「ヘアメイク師®という働き方を打ち出したから採用人数が増えた」と単純に言い切ることはできません。
採用人数には、募集枠や採用活動の時期、学生側の動向など、さまざまな要素が関係します。
ただ、美容師としての働き方だけではなく、ヘアメイクにも携われることを伝えるようになった時期から、採用への問い合わせが増えてきたという変化は、サロングラフの採用実績から見えてきます。
問い合わせが増えたからといって、そのまま採用につながるわけではない

ここで注意したいのが、「問い合わせ数=応募者数=採用候補者数」ではないということです。
採用への問い合わせをした学生の中には、まずサロン見学をする人もいれば、インターンシップを経験する人もいます。
その後、面接に進む人もいれば、見学やインターンシップを通して自分の希望とサロンの働き方が合わないと判断する人もいます。
反対に、サロン側が学生との話を通して「自分たちの求める働き方と合っている」と判断するケースもあります。
つまり、問い合わせをどれだけ面接や採用につなげられるかは、各サロンの採用活動や学生との関わり方によっても変わります。
そのため、サロングラフでは問い合わせ数を単純な「採用率」として捉えるのではなく、まずは自分たちの働き方に興味を持ってくれる学生との接点がどれだけ増えたかを見る一つの指標として考えています。
採用活動で変わったのは、人数だけではない
ヘアメイクもできる美容師という働き方を打ち出してから、採用活動の中で変わったのは問い合わせの数だけではありません。
学生との会話にも変化が生まれました。
以前は「美容師として働きたい」という希望を持ってサロンを探している学生とのやり取りが中心でした。
そこに、「美容師にもなりたいけれど、ヘアメイクにも興味がある」という学生が加わります。
すると、サロン見学や面接の段階から、「美容師として働くことを基本に、ヘアメイクにも挑戦できる」という働き方を具体的に説明できるようになります。
これは、採用する側にとっても大きな意味があります。
「ヘアメイクができる」の意味を入社前に共有する
「ヘアメイクもできる」とだけ伝えてしまうと、学生によっては「ヘアメイクの仕事が中心なのかな」と受け取る可能性があります。
しかし、サロングラフのヘアメイク師®は、ヘアメイクだけを専門に行う働き方ではありません。
美容師としてのサロンワークを基本にしながら、その経験を活かしてヘアメイクの仕事にも携わる。
この点を採用活動の段階から伝えることが重要です。
例えば、撮影の仕事に興味があっても、サロンワークをほとんどやりたくないという人であれば、入社後に「思っていた働き方と違った」と感じる可能性があります。
一方で、
「美容師としての仕事もしたい」
「ヘアメイクにも挑戦したい」
「将来的に仕事の幅を広げたい」
という学生であれば、ヘアメイク師®という働き方を選択肢として考えやすくなります。
だからこそ、ヘアメイク師®という打ち出しは、単純に応募者を増やすためだけのものではありません。
入社する前から、お互いの期待を合わせるための情報としても機能しています。
ヘアメイク師®という働き方が、採用の間口を広げる

サロングラフの採用実績から考えると、ヘアメイク師®という働き方を採用に取り入れるメリットの一つは、これまで美容室だけでは接点を持ちにくかった美容学生にも、自社の働き方を知ってもらえる可能性が広がることです。
美容学生の中には、美容師を目指しながら、撮影やファッション、ブライダルなどのヘアメイクにも興味を持っている人がいます。
しかし、「美容師になる」か「ヘアメイクの仕事をする」かを、必ずしもどちらか一方に決めなければならないとは限りません。
美容師としての技術や経験を身につけながら、ヘアメイクの仕事にも挑戦する。
そんな選択肢があることを伝えることで、これまでとは違った層の学生にサロンを知ってもらえる可能性があります。
そして実際にサロングラフでは、2021年度の12人だった問い合わせが、2026年度には69人まで増えています。
もちろん、この増加にはさまざまな要因が考えられるため、ヘアメイク師®という働き方だけが原因だと断定することはできません。
それでも、「美容師だけではないキャリアの可能性」を採用活動の中で明確に伝えてきたことが、学生との新しい接点をつくる一つのきっかけになったと考えています。
採用人数を増やすことだけが、採用のゴールではない
採用活動では、つい「何人応募があったか」「何人採用できたか」という数字に目が向きがちです。
もちろん、採用人数は重要な指標です。
しかし、サロングラフがヘアメイク師®という働き方を採用に取り入れる中で感じているのは、「どれだけ集めるか」だけでなく、「どんな人に興味を持ってもらうか」も重要だということです。
ヘアメイクに興味がある学生に対して、サロンワークを基本としながらヘアメイクにも挑戦できることを伝える。
そのうえで、実際の仕事内容やキャリアについて説明する。
そうすれば、入社後に「思っていた仕事と違った」というミスマッチを減らすことにもつながります。
採用の入口を広げながら、自分たちが提供できる働き方を正しく伝える。
それが、サロングラフが考えるヘアメイク師®を採用に取り入れる意味の一つです。
「何ができるか」を明確にすることから、採用は変わる
ヘアメイク師®という名称を掲げること自体が、採用のすべてを解決するわけではありません。
大切なのは、自分たちのサロンで、
- 美容師としてどんな仕事をするのか
- ヘアメイクではどんな仕事に挑戦できるのか
- どのようなキャリアを描けるのか
- どこまでをサロンとして提供できるのか
を明確にすることです。
その内容を、学生が理解できる言葉で伝える。
サロングラフの場合、それを「美容師だけではなく、ヘアメイクもできる」という打ち出しから始め、2022年8月の「ヘアメイク師®」商標取得を経て、一つの働き方として形にしてきました。
2021年度には12人だった新卒採用への問い合わせは、2026年度には69人になりました。
この数字は、ヘアメイク師®を導入すれば必ず同じ結果になるというものではありません。
一方で、美容師としての仕事に加えて、ヘアメイクという新しい可能性を提示することが、採用の間口を広げる一つの方法になり得ることを、サロングラフ自身の採用実績が示しています。
美容室の採用で「自分たちの魅力をどう伝えればいいのか」「他のサロンと何が違うのか」と悩んでいるなら、まずは自社で提供できる働き方を整理する。
そして、その中にヘアメイクという可能性があるのであれば、それを採用活動の中で伝えてみる。
ヘアメイク師®という働き方は、美容師の仕事を変えるだけではなく、美容室と美容学生が出会うきっかけを増やす選択肢にもなっています。

