「将来は人気の美容師になりたい」「たくさん指名される美容師になりたい」「美容師としてしっかり稼げるようになりたい」。
美容学生との面接でも、こうした目標を聞くことがあります。
ただ、「じゃあ月に何人くらい指名されたい?」「月の売上はいくらを目指したい?」と聞いてみると、具体的な数字までは答えられない人も少なくありません。
もちろん、学生の段階で明確な数字を決めていなくても不思議ではありません。
そもそも、現場で働いたことがなければ、月100万円の売上がどれくらいなのか、指名50人が多いのか少ないのかも分かりにくいからです。
そこで今回は、「売れる美容師」と呼ばれる人の数字を考えるときに知っておきたい、売上・客単価・指名数・働く日数の関係を見ていきます。
大切なのは「月○万円売れれば人気美容師」という答えを出すことではありません。
数字を分解していくことで、自分ならどんな美容師を目指したいのかを考えられるようになることが、この記事の目的です。
そもそも「売れている美容師」に決まった基準はない

最初に知っておきたいのが、業界全体で「月○万円売れば売れている美容師」「指名○人なら人気美容師」といった統一された基準があるわけではないということです。
美容師の売上は、サロンの価格設定や地域、客層、メニュー構成、勤務日数などによって大きく変わります。
たとえば、平均客単価が8,000円のサロンと15,000円のサロンでは、同じ100万円を売るために必要なお客様の人数が違います。
また、カットを中心に担当する美容師と、カラーや髪質改善など高単価のメニューを多く担当する美容師でも、1日に必要な客数は変わります。
そのため、単純に「指名客が100人いるから、この人のほうが売れている」とは言い切れません。
実際の求人でも、月の客数や指名数、客単価にはかなり幅があります。ある求人では月182人のうち140人が指名客、別の例では月74人のうち60人が指名客という実績が紹介されています。
つまり、「売れている美容師」の数字を見るときは、1つの数字だけで判断しないことが大切です。
まずは「月の売上」を考えてみる
美容師としての目標を考えるなら、まず分かりやすいのが月の売上です。
たとえば、
- 月50万円
- 月80万円
- 月100万円
- 月120万円
- 月150万円
- 月200万円
など、いくつかの目標を置いてみることができます。
もちろん、これらの数字に「ここからが売れている美容師」という境界線があるわけではありません。
ただ、月100万円という売上は、美容師の求人などでも収入モデルや歩合計算の例として登場することが多い数字です。実際に、指名売上100万円に対して45%の歩合で報酬45万円とする求人例もあります。
ここで重要なのは、「月100万円売る美容師はすごい」と覚えることではありません。
「自分が月100万円売るとしたら、何人のお客様を担当する必要があるんだろう?」と考えてみることです。
月100万円を売るには何人のお客様が必要?

必要な人数は、客単価によって変わります。
たとえば、月の技術売上を100万円とした場合、
| 平均客単価 | 月100万円に必要な客数 |
| 8,000円 | 約125人 |
| 10,000円 | 100人 |
| 12,000円 | 約84人 |
| 15,000円 | 約67人 |
この数字は、単純に「売上÷客単価」で計算した目安です。
実際には店販売上や指名料などが加わる場合もありますし、メニューによって客単価も変わります。
それでも、この表を見るだけで「月100万円」という数字の見え方は少し変わるのではないでしょうか。
たとえば客単価1万円なら、月100万円を売るためには月100人。
月20日勤務すると仮定すれば、単純計算では1日5人です。
一方で客単価1万5,000円なら、月100万円に必要なのは約67人。
月20日勤務なら、1日あたり約3〜4人です。
同じ月100万円でも、必要な客数はかなり違います。
「指名100人」なら人気美容師?
では、「指名される美容師」という視点ではどうでしょうか。
たとえば、月100人のお客様を担当して、そのほとんどが指名客なら、かなり多くのお客様から継続して選ばれている状態だと考えられます。
一方で、指名客が50人でも客単価が高ければ、指名売上は大きくなります。
仮に指名客だけで考えて、
指名50人 × 客単価1万円 = 指名売上50万円
です。
同じ条件で指名100人なら、
指名100人 × 客単価1万円 = 指名売上100万円
になります。
ところが、客単価1万5,000円なら、
指名67人 × 1万5,000円 ≒ 指名売上100万円
です。
このように考えると、「指名何人なら売れている?」という問いだけでは、実は判断しにくいことが分かります。
指名数は、どれくらいのお客様から選ばれているかを見る数字。
売上は、その結果としてどれくらいの価値を提供しているかを見る数字。
客単価は、1回の施術でどれくらいの売上をつくっているかを見る数字。
それぞれ違うものとして考えると、自分の目標も立てやすくなります。
「月100万円売る美容師」を目指すなら、ここから逆算できる

ここまでの数字を使えば、自分の目標をもう少し具体的にできます。
たとえば、
目標:月100万円
↓
客単価:1万円
↓
必要客数:月100人
↓
月20日勤務なら:1日5人
という具合です。
ここからさらに、
「1人あたりの施術時間はどのくらいになる?」
「自分はマンツーマンで担当したい?」
「アシスタントに入ってもらう働き方がいい?」
「月100人のお客様に来てもらうには、どのくらいの新規客が必要?」
「そのうち何割くらいが再来店してくれるとよさそう?」
と考えていくことができます。
ここまでくると、「人気美容師になりたい」という目標が、少しずつ具体的になってきます。
指名客を増やすことだけが目標ではない
美容師として売上を伸ばすことを考えると、「指名客を増やさなければ」と考えるかもしれません。
もちろん、継続して来店してくれるお客様が増えることは、スタイリストとして大きな意味があります。
ただ、指名数だけを追えばいいとも限りません。
たとえば、
- 客単価を上げる
- 再来店率を高める
- 次回予約につなげる
- 自分の得意なメニューをつくる
- 新規のお客様に知ってもらう
- 店販を含めた売上を考える
など、売上につながる要素はいくつもあります。
また、たくさんのお客様を短時間で担当することを目指すのか、一人のお客様に時間をかけて高単価の施術を提供するのかでも、目指す働き方は変わります。
売上を増やす方法は、客数を増やすことだけではありません。
だからこそ、自分がどんな美容師になりたいのかを考えたうえで、数字を見ることが大切です。
「たくさん稼ぎたい」なら、給与も売上から逆算してみる

美容師として働くなら、売上だけでなく「実際にどのくらい収入になるのか」も気になるところです。
ここでは、歩合制の給与を例に考えてみましょう。
仮に、あるサロンの給与体系が「対象となる売上の45%が歩合」とします。
月100万円の対象売上があれば、
100万円 × 45% = 45万円
となります。
ただし、これはあくまで歩合計算上の金額です。
実際の給与体系では、基本給と歩合を組み合わせていたり、一定額を超えた部分だけに歩合がついたり、指名売上とフリー売上で歩合率が違ったりすることがあります。
業務委託の場合も、報酬率だけでなく材料費や諸経費などの扱いによって実際の受取額は変わります。現在の求人でも、指名・フリーで異なる歩合率や、諸経費を差し引く条件などが見られます。
そのため、「歩合45%なら、売上100万円で必ず45万円もらえる」と考えるのではなく、
「自分が働きたいサロンでは、どの売上に対して、どんな条件で歩合がつくのか」を見る必要があります。
さらに、雇用されている場合は、支給額から社会保険料や税金などが差し引かれるため、支給額と手取りも同じではありません。
求人を見るときは「歩合○%」という数字だけでなく、給与の計算方法まで確認しておきたいところです。
目標年収から考える方法もある
「月100万円売りたい」ではなく、「将来これくらい稼ぎたい」というところから考えても構いません。
たとえば、
年収500万円を目指したい
↓
「自分が考えている働き方なら、月の収入はどのくらい必要?」
↓
「その収入を得るためには、どのくらいの売上が必要?」
↓
「その売上を客単価と客数に分解すると?」
という順番です。
ただし、年収と売上の関係も、雇用形態や給与体系によって大きく変わります。
そのため、「年収○万円なら売上○万円必要」と一律に決めるのではなく、自分が働きたいサロンの給与体系を確認してから逆算するのが現実的です。
自分の目標を「数字」にしてみる

ここまで読んだら、一度自分の目標を書き出してみるのもおすすめです。
たとえば、
将来どうなりたい?
「指名される美容師になりたい」
↓
どのくらい?
「月50人に指名される美容師を目指したい」
↓
客単価は?
「自分が働きたいサロンでは1万円くらい」
↓
指名売上は?
「50人 × 1万円 = 月50万円」
というように、順番に数字を入れていきます。
あるいは、
「月100万円売れる美容師になりたい」
という目標から、
「客単価1万円なら月100人」
「月20日働くなら1日5人」
と逆算してみてもいいでしょう。
ここで「思ったより多いな」と感じるかもしれません。
逆に、「このくらいなら目指せそう」と感じる人もいるでしょう。
どちらが正解ということではありません。
自分がどんな働き方をしたいかによって、ちょうどいい数字も変わるからです。
美容学生のうちに「売れる美容師」を具体的に考えてみる
面接で「人気美容師になりたい」「たくさん稼ぎたい」と話すこと自体は、もちろん悪いことではありません。
むしろ、将来の目標を持っていることは大切です。
ただ、その先にある数字まで考えてみると、目標の解像度は変わります。
「月100万円売りたい」と決めたなら、客単価はいくらなのか。
「指名される美容師になりたい」なら、月何人くらいをイメージしているのか。
「たくさん稼ぎたい」なら、どんな給与体系のサロンで、どのくらいの売上をつくる必要があるのか。
そこまで考えてみると、就職先を選ぶときにも見るべきものが変わってきます。
たとえば、同じ「歩合あり」の求人でも、歩合が発生する売上の種類や条件はサロンによって異なります。実際の求人でも、指名売上とフリー売上で異なる歩合率を設定しているケースや、売上・指名数などによって還元率が変わるケースがあります。
だからこそ、「歩合率が高いから、このサロンなら稼げそう」だけで決めるのではなく、「自分が目指す売上をつくったとき、どのくらいの給与になるのか」「そのためには何人のお客様を担当する必要があるのか」まで考えてみると、求人票の見え方も変わってきます。
「売れる美容師」の数字を、自分の目標に置き換えてみよう

美容師としてどこを目指すのかに、決まった正解はありません。
月50万円を目標にする人もいれば、100万円を目指す人もいる。
できるだけ多くのお客様を担当したい人もいれば、一人ひとりに時間をかけて高単価の施術をしたい人もいる。
将来的に独立したい人と、サロンの中で長く働きたい人でも、必要になる数字は変わります。
だから、「売れている美容師とは月○万円」「人気美容師とは指名○人」と決めつける必要はありません。
大切なのは、自分が目指したい状態を数字に置き換え、その数字をさらに客単価・客数・勤務日数などに分解してみることです。
「人気の美容師になりたい」
「指名される美容師になりたい」
「美容師としてしっかり稼ぎたい」
もし今そう考えているなら、まずはその言葉の後ろに、自分なりの数字を置いてみてください。
そこから逆算していくと、就職してから身につけたい技術や接客、集客についても、少しずつ具体的に考えられるようになります。

