スタイリストとして売上も安定してきて、後輩の指導を任されることも増えてきた。そんなタイミングで、オーナーから「そろそろ店長やってみない?」と打診されたら、あなたはどうしますか?
「認めてもらえてうれしい!」という気持ちがある一方で、
「店長って具体的に何をするんだろう?」
「責任ばかり増えて、給料はそんなに変わらないんじゃない?」
「今のお客様を大切にしながら、店長の仕事までできるのかな?」
「そもそも、自分は店長に向いているんだろうか?」
と、迷ってしまう人もいるでしょう。
美容師のキャリアというと、独立やフリーランスなど「会社の外に出る選択肢」が注目されがちです。一方で、今いるサロンで店長やマネージャーを目指すことも、美容師としてキャリアを広げるひとつの方法です。
ただし、店長になることがすべての美容師にとって正解とは限りません。
この記事では、オーナーから「店長やってみない?」と打診された美容師さんに向けて、店長になるメリット・デメリットだけでなく、店長に向いている人・プレイヤーとして働きたい人の違い、引き受ける前に確認したいことまで整理します。
「せっかく声をかけてもらったから」と勢いで決める前に、一度自分の気持ちとキャリアを整理してみましょう。
【まず結論】店長になるかどうかは「どんな美容師になりたいか」で考えよう

店長を引き受けるべきか、断るべきか。
その答えは、これからどんな美容師として働きたいのかによって変わります。
将来的に、
- 自分のサロンを持ちたい
- 経営や店舗運営を学びたい
- 人を育てる仕事にも興味がある
- 自分だけでなく、スタッフや店舗全体の成長にも関わりたい
と考えているなら、店長経験がキャリアの大きな財産になる可能性があります。
一方で、
- お客様一人ひとりと向き合いたい
- 技術をもっと極めたい
- 自分のペースで働きたい
- 管理業務よりも施術そのものが好き
という人なら、プレイヤーとしてキャリアを築く道もあります。
つまり、「店長になれるか」と「店長になりたいか」は別の話。
まずは店長になること自体を目標にするのではなく、自分が何を大切にして美容師を続けたいのかを考えてみましょう。
美容師が店長になると仕事内容はどう変わる?
「店長」と聞いても、具体的にどんな仕事をするのかイメージしにくい人もいるかもしれません。
店長の仕事内容はサロンによって異なりますが、プレイヤーとして施術をする以外に、店舗を運営するための業務を担当することがあります。
たとえば、
- 店舗の売上管理
- スタッフの教育
- シフトの調整
- スタッフとの面談
- 集客についての検討
- 採用活動
- 店舗内の問題への対応
- ミーティング
などです。
もちろん、すべての店長がこれらを担当するわけではありません。
「プレイヤー兼店長」としてこれまで通り施術を続ける場合もあれば、マネジメント業務の比重が大きくなる場合もあります。
そのため、店長を引き受ける前に「自分は何を担当するのか」を確認することが非常に重要です。
美容師が店長になる3つのメリット

ここからは、店長という役職に就くことで得られるメリットを見ていきましょう。
1.「自分の指名売上」以外の稼ぎ方が身につく
プレイヤーとして働いている間は、自分が担当するお客様への施術や自分自身の売上が中心になります。
店長になると、そこから視点が変わります。
「自分の売上をどう上げるか」だけではなく、「店舗全体の売上をどう上げるか」を考えるようになるからです。
スタッフの働き方や集客、教育など、自分一人の施術だけではなく、店舗全体の動きが売上につながっていくことを実感できるでしょう。
これは、美容師として大きな視点の変化です。
「自分が施術して売上をつくる」というプレイヤーとしての考え方から、「人や仕組みを通して店舗を成長させる」という考え方を身につけるきっかけになります。
将来的に経営やマネジメントに進みたい人にとっては、貴重な経験になるでしょう。
2.将来の独立・開業に向けた経験になる
「いつか自分のサロンを持ちたい」と考えている美容師さんにとって、店長経験は店舗運営を学ぶ機会になります。
自分でサロンを開業すると、技術だけでなく、
- 集客
- 採用
- スタッフ教育
- 売上管理
- 材料管理
- 店舗運営
など、さまざまなことを考える必要があります。
店長としてどこまで任されるかはサロンによって異なりますが、実際の店舗運営に関わることで、プレイヤーだけでは見えにくかった部分を知ることができます。
「将来独立したいけれど、経営について何もわからない」という人にとって、実際のサロンを通して店舗運営を学べることは、店長になるメリットのひとつです。
ただし、店長になれば経営のすべてを経験できるわけではありません。
独立を視野に入れているなら、「店長になったら何を任せてもらえるのか」まで確認しておきましょう。
3.人を育てる・組織を動かす力が身につく
店長になると、後輩の技術指導だけでなく、スタッフそれぞれの状況を見ながら仕事を任せたり、相談に乗ったりする機会も増えます。
人によって得意なことや仕事に対する考え方は違います。
そのため、「どう伝えたら理解してもらえるか」「どうしたらスタッフが働きやすくなるか」「それぞれの強みをどう活かすか」を考える場面も出てくるでしょう。
自分自身の技術を磨くこととは違った、人を育てる・組織を動かすというスキルを身につけられるのは、役職に就くからこその経験です。
美容師が店長になる2つのデメリット

一方で、店長になったことで「思っていたより大変だった」と感じる可能性もあります。
メリットだけで判断せず、ここもしっかり天秤にかけてみましょう。
1.プレイヤーとしての時間が削られる
店長になると、施術以外の仕事が増えます。
売上管理やミーティング、スタッフとの面談、教育、シフト調整など、サロンを運営するための仕事に時間を使うことになります。
その分、これまで通り自分のお客様を担当する時間が減る可能性があります。
「もっと技術を磨きたい」「自分のお客様をもっと増やしたい」と思っている人にとっては、ここが大きなジレンマになるかもしれません。
特にプレイヤーとしての売上を伸ばしている途中なら、店長業務と自分の売上をどう両立するのかは重要な問題です。
2.オーナーとスタッフの間に立つ場面が増える
店長は、オーナーなど経営側と現場スタッフの間に立つことがあります。
経営側からは、「店舗の売上を上げたい」「集客を強化したい」と求められる一方で、スタッフからは、「休みを増やしたい」「もっと働きやすくしてほしい」など、異なる意見が出てくることもあります。
その両方の話を聞きながら、店舗を円滑に運営していくのが店長の仕事です。
もちろん、すべてのサロンで店長が「板挟み」になるわけではありません。
ただ、自分の仕事だけに集中するプレイヤーとは違い、人と人の間に立って調整する場面が増える可能性があることは知っておきたいところです。
あなたは店長に向いている?美容師としての働き方をチェック
「メリットとデメリットはわかった。でも、そもそも自分は店長に向いているの?」
そんな人は、ここで一度、自分の考え方を整理してみましょう。
店長・マネージャーに向いているかチェック
次の項目で、当てはまるものはいくつありますか?
- 後輩やスタッフが成長することに喜びを感じる
- 人に教えることが嫌いではない
- 自分だけでなく、周囲の成果も気になる
- 「もっとこの店を良くしたい」と思うことがある
- 売上や数字を見ることに抵抗がない
- 人の意見を聞きながら調整することが苦ではない
- 将来的に経営や独立にも興味がある
- 自分が前に出るだけでなく、周囲をサポートすることにもやりがいを感じる
- トラブルが起きたときに、感情的にならず解決方法を考えられる
当てはまる項目が多い人は、店長やマネージャーとして働くことにやりがいを感じる可能性があります。
ただし、チェックが多いから店長になるべき、というものではありません。
あくまで、自分の適性や興味を考えるための材料として使ってみてください。
プレイヤーとして働く方が向いているかチェック
一方で、次の項目に当てはまるものが多いなら、プレイヤーとしての働き方を大切にしたいタイプかもしれません。
- お客様一人ひとりと向き合う時間を何より大切にしたい
- 美容師として技術を磨き続けることが楽しい
- 自分の指名や売上を伸ばすことにやりがいを感じる
- 管理業務より施術をしている方が好き
- 人間関係の調整役になるのは苦手
- 自分の裁量で働ける時間を大切にしたい
- 将来もプレイヤーとして美容師を続けたい
- 経営やマネジメントにはあまり興味がない
こちらも、当てはまるから店長に向いていないということではありません。
「自分は美容師として何をしている時間が一番楽しいのか」を考えるためのチェックです。
店長に向いている部分がありながら、「今はまだプレイヤーとして働きたい」という人もいるでしょう。
「役職に就きたい」のか「自由にプレイヤーとして働きたい」のかを考える

店長を打診されたときは、「向いているか」だけでなく、そもそも役職に就きたいと思っているかも考えてみましょう。
たとえば、「人を育てることには興味があるけれど、自分自身もまだ技術を伸ばしたい」という人もいれば、「自分のお客様を増やして、プレイヤーとしてもっと売上を伸ばしたい」という人もいます。
どちらも美容師として間違ったキャリアではありません。
美容師として長く働くことを考えたとき、役職者になることだけがキャリアアップではありません。
店長、マネージャー、教育担当などの管理・教育側へ進む道もあれば、トップスタイリストとして技術や指名を追求する道もあります。
フリーランスや業務委託など、働き方そのものを変える選択肢もあります。
だからこそ、「店長に誘われた=店長になるべき」と考えるのではなく、自分がどんな働き方をしたいのかを基準に考えることが大切です。
店長を引き受ける前にオーナーへ確認しておきたい6つのこと

「やってみようかな」と思ったとしても、すぐに返事をする必要はありません。
店長になった後に「こんな仕事までやるとは思わなかった」「思っていたより条件が違った」とならないためにも、具体的な条件を確認しておきましょう。
1.給与や役職手当はどう変わる?
店長になることで給与がどう変わるのかは、必ず確認したいポイントです。
- 基本給は変わるのか
- 役職手当はいくらなのか
- インセンティブはどうなるのか
- 賞与などに変更はあるのか
など、具体的な条件を確認しましょう。
責任や業務が増えるのであれば、それに対してどのような待遇になるのかを知っておくことは大切です。
2.店長として何を任される?
「店長」といっても、任される仕事内容はサロンによって違います。
教育だけなのか、売上管理や採用まで担当するのか。
店舗運営のどの部分まで自分が責任を持つのか、具体的に聞いておきましょう。
3.自分の売上目標はどうなる?
プレイヤー兼店長になる場合は、特に確認しておきたいポイントです。
店舗全体の売上目標を追いながら、これまでと同じ個人売上も求められるのでしょうか。
店長業務に時間を使うことで施術時間が減るのであれば、個人売上の目標をどう考えるのかも事前に話し合っておきたいところです。
4.店舗の売上について、どこまで責任を持つ?
「店舗の売上を上げる」という仕事でも、店長にどこまで権限があるのかによって状況は変わります。
集客について提案できるのか、スタッフの配置を決められるのか、キャンペーンなどを自分から企画できるのか。
責任だけでなく、それに見合った権限があるのかも確認しておきましょう。
5.店長業務をする時間は確保される?
「空いている時間に店長業務をやってね」という形だと、これまでの仕事に新しい業務が追加されるだけになってしまう可能性があります。
勤務時間の中で店長業務を行う時間が確保されるのか、確認しておきましょう。
6.スタッフの採用・評価まで担当する?
スタッフの採用や評価、面談などまで店長が担当するのかどうかも、事前に確認しておきたいところです。
人を管理する仕事は、教育とはまた違った責任が生じます。
「店長になったら何をするのか」だけでなく、「何をしないのか」まで確認しておくと、就任後のギャップを減らしやすくなります。
「店長になりたくない」と思ったら、断ってもいい

ここまで読んで、「やっぱり自分は店長になりたいわけじゃないかも」と思った人もいるかもしれません。
でも、それはそれで問題ありません。
店長を打診されたからといって、必ず引き受けなければならないわけではありません。
「期待してもらったのに断ったら、やる気がないと思われそう」と心配になるかもしれませんが、店長にならないことと、美容師として成長することは別の話です。
プレイヤーとして技術を磨き、お客様から選ばれる美容師を目指すことも、立派なキャリアです。
もし断るのであれば、「店長はやりたくありません」だけではなく、「今はプレイヤーとして技術やお客様との関係をもっと深めたい」など、自分が今後どうなりたいのかを伝えると、自分の意思も相手に伝わりやすくなります。
また、「今は店長になりたくない」ことと、「これから先も絶対に店長にならない」ことも別です。
今はプレイヤーとして経験を積み、数年後に改めてマネジメントに挑戦するという選択もできます。
「今は決められない」なら、すぐに答えを出さなくてもいい
店長というのは、今後の美容師としての働き方にも関わる大きな決断です。
その場で「やります」「やりません」と即答できなくても、不思議ではありません。
仕事内容や給与、責任の範囲などを確認したうえで、「少し考える時間をください」と伝えてもいいでしょう。
むしろ、自分が納得して働くためには、曖昧な部分を残したまま引き受けないことが大切です。
結局、美容師は店長になるべき?プレイヤーを続けるべき?
ここまで読んでも、まだ迷っている人もいるでしょう。
そんなときは、「店長になった自分」と「プレイヤーを続けた自分」をそれぞれ想像してみるのもおすすめです。
店長を引き受けることで、こんな未来が見えるなら
- 将来の独立に向けて店舗運営を経験したい
- 人を育てる仕事にも挑戦したい
- 店舗全体を成長させることに興味がある
- 自分一人の売上だけではなく、組織を動かす仕事をしてみたい
- 新しいキャリアに挑戦してみたい
このように感じるなら、店長というポジションを経験してみる価値は十分にあります。
プレイヤーを続けることで、こんな未来が見えるなら
- お客様との時間をもっと大切にしたい
- 技術をさらに突き詰めたい
- 指名や売上を伸ばしていきたい
- 自分のペースや自由度を大切にしたい
- 管理業務よりも美容師として施術することが好き
こう感じるなら、無理に店長を目指す必要はありません。
「店長にならない」という選択をしたとしても、美容師としてのキャリアが止まるわけではありません。
まとめ|「店長になれる」と「店長になりたい」は別の話
オーナーから「店長やってみない?」と声をかけてもらったら、まずはこれまでの仕事を評価してもらったことを素直に喜んでいいと思います。
そのうえで、焦って答えを出す必要はありません。
店長になれば、店舗運営やマネジメント、人材育成など、プレイヤーだけでは経験しにくい仕事に挑戦できます。
一方で、自分のお客様や技術に向き合う時間が減ったり、人と人の間に立って調整する場面が増えたりする可能性もあります。
だからこそ、「店長になれるか」ではなく「自分は店長になりたいのか」を考えてみてください。
給与や仕事内容、責任の範囲などを確認したうえで、5年後、10年後にどんな美容師になっていたいのかを考える。
その結果、店長を引き受けるのも、今はプレイヤーとして働くのも、どちらも間違いではありません。
「店長やってみない?」という一言を、自分の美容師としてのキャリアを改めて考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。


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