中途美容師が集まるサロンには理由がある|業務委託・シェアサロンの仕組みと発信力

美容師の転職先として注目される業務委託・シェアサロン。
中途美容師が惹かれる理由や、サロン経営に活かせる発信・仕組みづくりのポイントをまとめました。

目次

はじめに|中途美容師の転職理由が変わりつつあります

ここ数年、美容師の働き方が大きく変わってきています。「正社員でサロンに勤めて、いずれは店長や独立へ」という流れだけではなく、業務委託サロンやシェアサロンなど、さまざまな選択肢が広がっています。

とくに中途美容師の転職理由は、「今の職場に不満があるから」よりも、「もっと自分らしい働き方をしたいから」という前向きな動機が増えています。SNSで“働く姿”を発信できるようになり、「自分のペースで働けるサロン」「人間関係のストレスが少ない環境」など、価値観に合わせて職場を選ぶ時代になりました。

この記事では、いま中途美容師が注目している業務委託サロンやシェアサロンの動き、そしてそこから見えてくる“これからのサロン経営のヒント”を整理してみます。

美容師の働き方が多様化している背景

美容業界全体を見渡すと、いま「働き方の多様化」というキーワードが欠かせません。
終身雇用や年功序列のような構造が弱まり、美容師自身が“自分で選ぶ働き方”を模索する流れが加速しています。

その背景には、技術・情報・発信手段のすべてが個人の手に渡ったという時代の変化があります。

フリーランス・業務委託という選択肢の広がり

美容業界ではここ数年、フリーランスや業務委託で働く美容師が増えています。
予約アプリやSNSの普及で、個人でもお客さまを集めやすくなったことが大きな要因です。
また、社会全体で副業や個人事業主という働き方が浸透したことも後押ししています。

内閣官房日本経済再生総合事務局が公表している「フリーランス実態調査結果」によると、
日本のフリーランス人口は2020年時点で約462万人。
さらに、日経MJの調査ではフリーランス美容師は約8万3,000人と発表されています。

厚生労働省「美容業概要」によると、令和6年3月末時点での従業美容師数は57万9,768人。
この数をもとにすると、全体の約16%がフリーランスとして活動している計算になります。
副業解禁やマッチングプラットフォームの発達などを背景に、 “個で働く”流れは今後も拡大していくと考えられます。

(引用:内閣官房日本経済再生総合事務局「フリーランス実態調査結果」、日経MJ、厚生労働省「美容業概要」)

“安定”から“納得”へと変わる価値観

以前は「福利厚生が整っている」「固定給がある」「ブランド力がある」など、いわゆる“安定志向”で転職を考える人が多くいました。けれど最近では、「自由に働ける」「時間の使い方を自分で決めたい」といった、 “納得して働ける環境”を重視する傾向が強まっています。

中途美容師の多くはすでに技術を持っている分、 “どう働くか”よりも“なぜここで働くのか”を大事にしているのだと思います。

業務委託サロンに見る「安定と自由のバランス」

中途美容師の転職先として、最も注目されているのが業務委託サロンです。

この形態は、サロンのブランド力と個人の裁量が共存し、“組織に属しながらも自由に働ける”という絶妙なバランスが支持されています。

成果報酬と集客支援が人気の理由

業務委託サロンは、サロンと美容師が「業務委託契約」を結び、成果報酬制(歩合給)で報酬が決まる仕組みです。 一般的にはフリー客が40%、指名客は50〜60%に設定されているケースが多く、サロンが集客を行うため、顧客を持たない美容師でも始めやすいのが特徴です。

たとえばAgu.(アグ)は、株式会社AB&Companyが展開する美容室チェーンで、2024年8月1日時点で国内1000店舗を突破しました。全国規模の展開を支える仕組みの中で、業務委託美容師にも安定した集客環境を提供しています。

また、ALBUM(アルバム)は正社員と業務委託のハイブリッド型を採用し、自由度と安定の両方を兼ね備えたモデルを作り上げています。

(出典:PR TIMES「Agu.グループ、国内店舗数1000店舗突破」)

中途美容師にとってのメリット

中途美容師にとって、業務委託サロンは「いきなり独立するのは不安だけど、もう少し自由に働きたい」というニーズにちょうど合います。固定給ではなく歩合制なので、努力が収入に直結しやすく、子育てやライフスタイルに合わせて働く人にも向いています。

一方で、経営側には「雇用リスクが少なく、店舗を増やしやすい」という利点があります。ただし最近は、インボイス制度の影響や契約形態の曖昧さなど、制度面での整備が求められているという現実もあります。

シェアサロンに見る「自分らしく働ける環境」

もうひとつ注目されているのが、シェアサロンという新しい形です。個人のブランド力やSNS発信を活かしながら、仲間と空間を共有するというモデルは、“ひとりで働く寂しさ”を減らしつつ、フリーランスとしての自由も確保できる点が支持されています。

完全フリーランスを支える仕組み

シェアサロンは、美容師が月額や時間貸しで席を借り、自分の顧客を担当するスタイルです。代表的なサロンには「GO TODAY SHAiRE SALON」や「SALOWIN」などがあります。

「GO TODAY SHAiRE SALON」は全国で50店舗以上を展開し、フリーランス美容師のコミュニティ形成にも力を入れています。

一方、「SALOWIN」は2019年に原宿で1号店をオープンし、現在は「SALOWIN」「SALOWIN Suite」「ALL SHARE」「me by,,」などを含めて全国159店舗(2025年4月時点)を展開しています。

最近のシェアサロンは、“ただの場所貸し”ではありません。予約・決済システムの提供や、集客サポート、コミュニティ運営などを通じて、フリーランスが安心して働ける仕組みを整えています。こうした仕組みが、個人で活動したい中途美容師の受け皿になっています。

発信を軸にしたブランドづくり

シェアサロンの多くは、発信力のある美容師が多いのが特徴です。サロン自体もSNS運用に力を入れており、スタイリスト一人ひとりのInstagramを紹介したり、店舗ツアーをリール動画で発信したりしています。

たとえばSALOWINは、洗練された空間デザインや映像で統一感を出し、“フリーランスでもブランドに所属しているような一体感”を演出しています。
「個でありながら、つながりがある」というバランスが、多くの美容師を惹きつけています。

中途美容師が転職先に求めていること

ここまで見てきたように、業務委託やシェアサロンの人気には明確な理由があります。中途美容師たちがいま大切にしているのは、“働き方そのもの”よりも“働く環境の心地よさ”です。

その価値観を正しく理解することが、経営側にとってのヒントになります。

高収入より「孤立しない自由」

中途美容師が求めているのは、ただの高収入ではありません。「自分のペースで働けるけれど、孤立はしたくない」という“安心できる自由”がキーワードになっています。

完全なフリーランスは不安だけれど、従来の組織には戻りたくない。その中間のポジションとして、業務委託サロンやシェアサロンが支持を集めているのです。

「誰と働くか」を重視する流れ

また、転職時には「どんな人が働いているか」「現場の雰囲気」など、人間関係や文化を重視する傾向も強くなっています。求人サイトの情報だけでなく、InstagramやYouTubeで実際のスタッフの声や雰囲気を見て判断する人が増えています。

サロン経営者にとっては、“採用広報=ブランディング”という意識がこれまで以上に重要になっています。

これからのサロン経営に求められる視点

中途美容師が惹かれるサロンには、共通して“自由と安心の両立”があります。経営者にとっても、それは「どうすれば働く人が続けやすいか」を考えるヒントになります。採用・教育・発信のすべてに通じるテーマです。

「雇用かフリーか」ではなく、自由度を設計する

これからは、「雇用か業務委託か」の二択ではなく、それぞれのステージに合わせた自由度を設計することが求められます。正社員として基礎を学び、業務委託で経験を広げ、希望があれば独立へ。

そんな段階的なキャリアラインがあると、人材の流出を防ぎながら長期的に関係を築けます。

発信とコミュニティの両立

中途美容師の多くは、SNSを通じて情報を得て、共感できる人やサロンに惹かれています。

一方で、チームとしてつながりを感じられる環境も大切です。オンライン発信と、オフラインのコミュニティや学びの場、その両方を整えていくことが、これからのサロン経営に欠かせません。

「安心できる自由」をどう作るか

自由すぎると不安が生まれ、安定しすぎると窮屈に感じる。その中間にある“安心できる自由”を、どんな仕組みや文化で実現するかがこれからのテーマです。

報酬・教育・発信・サポートのバランスを整えることで、中途美容師から「ここなら長く働けそう」と思われるサロンづくりができます。

まとめ|中途美容師の動きは、これからの経営を映す鏡

中途美容師の転職理由を見ていくと、単なる働き方の問題ではなく、業界全体の価値観の変化が見えてきます。

「もっと自由に」「でも、ちゃんとつながっていたい」

そんな声に応えるサロンほど、人が集まり、長く続いていくように感じます。

安定と自由の間で悩む美容師たちに、「ここでなら自分らしく働ける」と思ってもらえる環境を。そのために、サロンがどんな発信をしていくのか。その問いを持ち続けることが、これからの経営の基盤になっていくはずです。

本サイトは、東京都内でヘアメイクサロンを運営する株式会社プアラが発信しています。
現場での採用活動やスタッフ育成の経験をもとに、美容師・ヘアメイクとして働く人に役立つ情報をお届けしています。
働き方や採用に関する最新情報も、ぜひあわせてご覧ください。

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